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高校英語が履修免除に?CEFR B2基準を英語講師が本音で解説

 

【番外編】高校英語が免除に?CEFR B2で履修不要へ——英検準1級・1級保持の英語講師が本音で語る

ニュースが飛び込んできた朝

2026年4月23日、あるニュースが私の目に飛び込んできました。

「高校英語、履修免除に指標 国際規格活用、文科省案」

記事の内容を要約すると、次のようになります。次期学習指導要領において、高校入学時点で高い外国語能力を持つ生徒については、必修科目の英語の履修を免除できる制度を検討している。その基準として、語学力の国際標準規格「CEFR(セファール)」の「B2」レベル以上が提示された、というものです。

CEFR B2。文科省の基準では、英検準1級から1級に相当するレベルです。

このニュースを読んだ瞬間、私は思わずスマホの画面を二度見し、「ついに来たか」と心の中で呟きました。

 

CEFRとは何か:ゲームで例えると

CEFRは「ヨーロッパ言語共通参照枠」の略で、語学力を6段階で測る国際的な物差しです。高い方からC2、C1、B2、B1、A2、A1と分類されます。

ゲームで例えるなら、こんな感じでしょうか。

  • A1:チュートリアル完了。「こんにちは」「ありがとう」が言える。

  • A2:初心者の村を出たところ。日常の簡単なやり取りができる。

  • B1:メインストーリーを進め始めた段階。旅行先でなんとかやっていける。

  • B2:サブクエストもこなせるレベル。複雑な文章が理解でき、ネイティブともそれなりに議論できる。

  • C1:上級者。高度な文章を理解し、流暢に自分の意見を述べられる。

  • C2:やり込みプレイヤー。ネイティブに近い運用力。

現行の高校英語は、おおむねA2からB1に設定されています。つまり「初心者の村からメインストーリー序盤」の範囲です。

今回の免除基準であるB2は、そこを大きく超えた「サブクエスト攻略レベル」。高校入学時点でここに到達している生徒にとっては、確かに通常の授業では物足りないでしょう。

 

英語講師として「賛成」する理由

結論から言うと、私はこの制度に賛成です。

理由は明確で、私自身が日々感じている「もったいなさ」が解消されるからです。

アカデミック・ロードでは、小学1年生から高校3年生まで英語を教えています。その中で、たまに出会うのが「中学生で英検準1級に合格する生徒」です。

英検準1級。私自身が29歳の時に、英語講師として就職するために必死で取得した資格です。それを中学生が持っている。素直にすごいと思います。しかし、ここからが問題なのです。

せっかく中学生で英検準1級を取っても、これまでの制度では、実はあまり恩恵がありませんでした。

 

中学生での英検準1級が「報われない」現実

まず、高校入試です。栃木県の公立高校入試では、英検準1級を持っていても特別な優遇措置はありません。もちろん内申書に書くことはできますが、試験の点数が直接加算されるわけではない。5級だろうが1級だろうが、入試当日に全員同じ問題を解くのです。

これは、オンラインゲームで例えるなら「最強装備を持っているのに、初心者ダンジョンの入場制限でアイテムを没収される」ようなものです。なんのための装備だったのか、という話になります。

さらに深刻なのが、大学入試での扱いです。

多くの大学が英検などの外部試験のスコアを入試に活用できる制度を設けていますが、ほとんどの場合「取得から概ね2年以内」のスコアを提出する必要があります。つまり、中学2年で英検準1級に合格しても、大学入試で使おうとすると有効期限が切れている。結局、高校2〜3年で「もう一回受けなおす」ことになるのです。

同じ級を、同じような問題で、もう一回。

受験料も時間もかかります。何より、すでにクリアした試験に再挑戦しなければならない精神的な徒労感。「え、もう持ってるのに?」と生徒が首をかしげる気持ちは、痛いほどわかります。

 

「できる子」が退屈する教室の風景

高校の英語の授業を想像してみてください。

先生が黒板に「現在完了形」と書き、”I have lived in Tokyo for 10 years.” という例文を解説する。

CEFR B2レベルの生徒にとって、これは「知っている」どころの騒ぎではありません。英検準1級に合格するためには、仮定法過去完了も、分詞構文も、倒置構文も、すでに理解している必要があります。語彙力も約7,500語。日常会話どころか、社会問題について英語で論じることもできるレベルです。

そんな生徒が、50分間「現在完了形」の授業を受ける。

かつて私が英会話スクールで企業研修を担当していた時、上級者クラスの生徒たちが「この授業、自分のレベルに合っていない」と不満を漏らすことがありました。できる人にとって、簡単すぎる授業ほど苦痛なものはありません。

退屈な授業は、学習意欲を殺します。せっかく英語が好きで、自分から勉強して高いレベルに到達した生徒のモチベーションを、制度が潰してしまう。これは、教育者として見過ごせない問題でした。

 

免除後の「選択肢」への期待

今回の文科省案では、英語の履修が免除された生徒には、代わりに「発展的な学習」や「他の外国語」の学校設定科目を履修できるとされています。さらに、学校の判断で大学の授業や専門機関の外国語講座、海外のサマースクールの履修も可能にすべきだとの提言もありました。

これは非常に良い方針だと思います。

英語がすでにできる生徒が、その時間を使って第二外国語を学ぶ。あるいは大学レベルの英語の授業を先取りする。海外のプログラムに参加する。これこそ、「できる子をさらに伸ばす」教育のあるべき姿ではないでしょうか。

私自身の経験を振り返ると、英検1級の勉強を通じて「死刑制度は廃止すべきか」「遺伝子組み換え食品の規制は強化すべきか」といった社会問題について英語で論じる力を鍛えました。高校時代にこうした「教養としての英語」に触れる機会があったなら、その後の人生はまた違ったものになっていたかもしれません。

 

それでも残る懸念:B2という基準は適切か?

賛成の立場ではありますが、一つだけ気になる点があります。

免除基準が「CEFR B2以上」というのは、果たして適切な水準なのか、という点です。B2は英検準1級から1級に相当する、かなり高いレベルです。現実的に、高校入学時点でこのレベルに達している生徒は、全体のごく一部でしょう。

一方で、もしこの基準がB1(英検2級程度)まで下がると、免除対象者が一気に増えます。英検2級は高校卒業程度のレベルとされていますから、「高校英語を免除するのに、高校卒業レベルで十分」というのは理屈としてはわかります。でも、B1レベルで高校英語を完全にスキップして大丈夫なのか、という不安は残ります。

B2という線引きは、「安全マージン」としてはちょうど良いのかもしれません。このレベルの生徒なら、確かに通常の高校英語の授業から得られるものは限定的でしょう。

 

地方の英語講師として願うこと

宇都宮という地方都市で英語を教えていると、「都市部との機会格差」を日々感じます。

東京であれば、帰国子女やインターナショナルスクール出身者も多く、高校入学時点でCEFR B2に達している生徒はそれなりにいるでしょう。一方、宇都宮でそのレベルの中学生は、正直なところ多くありません。

でも、だからこそ、この制度には意味があると思っています。

「頑張って英語力を伸ばせば、高校で新しい選択肢が広がる」

これは、地方の中学生にとって、英語学習の大きなモチベーションになり得ます。

かつて28歳の私は、英検準2級しか持っていない状態から英語学習を始めました。そこから英検1級、TOEIC 990点、通訳案内士と積み上げてきましたが、もし高校時代に「英語を頑張ればこんな選択肢がある」と知っていたら、もっと早くスタートを切れていたかもしれない。

遅すぎるスタートなんてない、と常々言っている私ですが、早いスタートに越したことはないのも事実です。

 

CEFRという「共通言語」の時代へ

今回の文科省案で個人的に注目しているのは、免除の水準を「CEFR」で記載する方針にしたことです。

英検やTOEICは日本国内では圧倒的な知名度がありますが、海外では通じません。「英検1級です」と言っても、海外の人には「それ、どのくらいすごいの?」とピンときてもらえないのです。

一方、CEFRはヨーロッパ発の国際標準です。「CEFR B2です」と言えば、世界中のどこでも「ああ、そのくらいのレベルね」と理解してもらえます。

英語力を国際的な物差しで測定し、それに基づいて教育課程を柔軟に編成する。これは日本の英語教育にとって、大きな一歩だと思います。

 

最後に:「英語資格三冠」の講師が思うこと

TOEIC 990点、英検1級、通訳案内士。いわゆる「英語資格三冠」を持つ講師として、一つだけ言わせてください。

資格やスコアは、あくまで「現在地の証明」です。

CEFR B2で高校英語が免除されたとしても、それは「英語学習のゴール」ではありません。むしろ、「本当の英語学習のスタートライン」に早く立てた、ということです。

私が英検1級に合格した時も、「これで英語が完璧だ」とは全く思えませんでした。合格の翌日には、まだ知らない単語の方が多いことに気づき、次の目標を探していました。

今回の制度改革が、「英語ができる生徒が、もっと高い場所を目指せる環境」を作ることにつながるなら、一人の英語講師として、心から歓迎したいと思います。

そして、アカデミック・ロードの生徒たちに、こう伝えたい。

「中学生で英検準1級を取ったら、もう高校で退屈しなくて済むかもしれないよ」と。

これ、最高のモチベーションになりませんか?

 

【今回のポイント】

  • 文科省がCEFR B2(英検準1級〜1級相当)以上の高校生に英語履修免除を検討中

  • 現行の高校英語はA2〜B1レベル。B2の生徒には物足りない授業が続いていた

  • 中学生で英検準1級を取っても、これまで高校入試や大学入試で十分に活かせなかった

  • 免除後は発展的な学習、他の外国語、大学の授業、海外プログラムなどが選択肢に

  • CEFRという国際基準での制度設計は、日本の英語教育の大きな一歩

  • 資格は「ゴール」ではなく「スタートライン」。できる生徒にはさらに高い場所を

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)