英語のセンスがないは嘘|TOEIC満点講師が生徒に伝える5つの本音
あなたの英語は、もう動き出している——教室で聞いた5つの言葉への返事
「先生、私って英語のセンスないですよね」
先日、高校2年生の女の子にこう言われました。彼女は英検2級に2回落ちていて、3回目の受験を前に、明らかに心が折れかけていました。
私は一瞬、何も言えませんでした。
なぜなら、その言葉に覚えがあったからです。かつてニュージーランドの語学学校で、20歳のヨーロッパ人たちがペラペラ英語を話すのを見ながら、28歳の私が毎晩思っていたこと。「俺には語学のセンスがないんだ」。まったく同じセリフです。
今回は、アカデミック・ロードの教室で生徒たちから実際に聞いた「5つの言葉」に、42歳の講師として返事を書きます。本来なら教室で直接伝えるべきことですが、言葉にするのが下手な私のことです。書いた方が、たぶん上手く届きます。英作文の大切さを説いている講師が、直接言葉で伝えられず文字に頼るのだから、我ながら情けない話ですが。
【その1】「先生、私って英語のセンスないですよね」
これは、先ほどの高校2年生の話の続きです。
「センスがない」。この言葉を聞くたびに、私は生徒にこう聞き返します。
「センスって、具体的にどういう意味?」
大抵、答えに詰まります。「なんか、パッとわかる感じ…」「一回聞いたら覚えられるとか…」。つまり、「努力なしで英語ができる才能」のことを「センス」と呼んでいるのです。
断言します。そんなものは、存在しません。
私の14年間の英語学習と、7年間の指導経験を振り返っても、「努力なしで英語ができるようになった人」には一人も出会ったことがありません。帰国子女ですら、幼少期に膨大な時間を英語環境で過ごしたという「努力の蓄積」があるのです。本人が意識していないだけで。
私自身、TOEIC 990点を取るまでに推定5,000時間以上を費やしています。英検1級は4回不合格になりました。サウスパークを何百話も観ました。それを「センス」と呼ぶ人はいないでしょう。
「センスがない」のではなく、「まだ時間が足りていない」だけ。ゲームで言えば、ボス戦の前にレベルが足りないのは「才能がない」からではなく、「経験値が足りない」からです。経験値は、稼げばいいだけの話です。
ちなみに、その高校2年生は3回目の受験で英検2級に合格しました。「センスがない」はずの彼女が、です。
【その2】「間違えるのが恥ずかしくて、手が挙げられません」
中学3年生の男の子から、面談の時にぼそっと言われた言葉です。
授業中、私が「この文を英語にしてみて」と当てると、彼はいつも小さな声で「わかりません」と答えていました。実は、ノートにはちゃんと答えを書いているのです。見せてもらうと、7割くらい合っている。でも、残りの3割が間違っているかもしれないから、口に出せない。
これを聞いた時、私の脳裏に浮かんだのは、かつての企業研修の風景でした。工場の上級者クラスで、「先生、この前置詞で合ってますか? 間違ってたら恥ずかしいので先に確認したいんですが」と質問してきた40代のエンジニアの方。間違えることへの恐怖は、年齢を問わないのです。
でも、考えてみてください。私たちは、間違えずに日本語を覚えたでしょうか?
幼い頃、「きのう、公園にいった」と言うべきところを「きのう、公園にいきた」と間違えて、周りの大人に直された経験が誰にでもあるはずです。恥ずかしかったですか? 覚えてすらいないでしょう。間違えて、直されて、また使って。その繰り返しで、私たちは日本語を身につけました。
英語も同じです。間違いは「失敗」ではなく「データ収集」です。
前回の記事で、「失敗は情報だ」という話をしました。英語の間違いも同じことです。「ここで a を使うべきところに the を使ってしまった」という間違いは、次に同じ場面に出会った時の判断材料になります。間違えなかった人は、その判断材料を持っていない。つまり、間違えた人の方が、一歩先に進んでいるのです。
あの男の子には、こう伝えました。
「ノートに書けているなら、もう7割正解だよ。残りの3割を間違えるために、声に出すんだ」
彼は不思議そうな顔をしていましたが、その次の授業から、少しずつ声が大きくなりました。
【その3】「英語なんて将来使わないし」
これは中学2年生の男の子。保護者に言われて仕方なく塾に来ている、という空気を全身から発散しているタイプです。
正直に言います。この言葉への反論は、簡単ではありません。
「グローバル化の時代だから英語は必要です」と言えば正論ですが、中学2年生の心には届きません。彼にとっての「世界」は、学校と家と、スマホの中にあるゲームです。グローバル化なんて、遠い星の出来事です。
だから私は、別の角度から答えることにしています。
「先生もそう思ってたよ。18歳の時」
私が大学を中退し、映画館で7年間アルバイトをしていた話は、このブログで何度もしてきました。あの頃の私にとって、英語は「受験のためだけの科目」でした。将来使うなんて、微塵も思っていなかった。
でも、28歳で人生が行き詰まった時、救いの手を差し伸べてくれたのは英語でした。ニュージーランドで世界が広がり、英語講師として生きる道が開けた。人生のどこで何が必要になるかは、誰にもわかりません。
ゲームをやったことがある人なら分かると思いますが、序盤で拾った「よくわからないアイテム」が、終盤のボス戦で唯一の攻略法になることがあります。英語は、そういうアイテムです。今は使い道がわからなくても、インベントリに入れておいて損はないのです。
ただし、私はこの話を中学2年生にしても、たいてい響きません。「ふーん」で終わります。
それでいいと思っています。この言葉が響くのは、彼が何かの壁にぶつかった時です。そしてその時、「あ、あの時先生が言ってたのはこういうことか」と思い出してくれたら、それで十分です。
種は、すぐには芽を出しません。
【その4】「もっと早く始めていれば良かった」
これは社会人の生徒さんから、月に一度は聞く言葉です。
30代後半の会社員の方が、TOEIC対策を始めた初日に言いました。「20代のうちにやっておけば、こんなに苦労しなかったのに」と。
以前の記事で、「28歳からでも遅くない」という話を書きました。あの記事で伝えたかったことの核心は、実はこの言葉への返答でもあります。
「早く始めていれば良かった」と思う気持ちはわかります。私だって、大学を中退せずに真面目に英語を勉強していたら、もっと楽だっただろうと思うことはあります。
でも、「たられば」は学習の敵です。
過去を悔やんでいる時間は、現在の学習時間をゼロにします。「あの時やっておけば」と10分考えるくらいなら、単語を10個覚えた方がいい。これは精神論ではなく、純粋な時間の算数です。
さらに言えば、「早く始めていれば良かった」と悔やむ人ほど、実はすでに「始められる状態にある」という事実に気づいていません。だって、今、目の前に座っているではないですか。テキストを開いて、鉛筆を持って。それは「始めている」ということです。
あなたが「遅い」と感じているそのスタートは、まだ始めていない誰かから見れば、とてつもなく「早い」のです。
【その5】「先生みたいにはなれないです」
これが、一番返事に困る言葉です。
TOEIC 990点、英検1級、通訳案内士。この3つの資格を知った生徒が、たまにこう言います。「すごいですね」の後に、「でも、自分には無理です」が続くのです。
待ってください。私の出発点を思い出してください。英検準2級。三人称単数現在のsが理解できない。大学中退。映画館アルバイト7年。オンラインゲームに12,000時間。
「先生みたいにはなれない」と言う生徒の多くは、現時点で私の出発点より遥かに上にいます。中学生なら、少なくとも学校に通い、毎日英語の授業を受けている。社会人なら、仕事をしながら学ぶ時間管理能力をすでに持っている。
28歳の私には、それすらなかったのです。
「先生みたいにはなれない」のではなく、「先生と同じルートを通る必要はまったくない」というのが正解です。
私の道のりは、遠回りの極致です。大学中退、フリーター、ゲーム廃人、ワーキングホリデー、英会話スクール、企業研修、突発性難聴、転職。このルートを再現する必要はまったくありません。
あなたには、あなたのルートがあります。そして、そのルートは私のものより、きっと効率的です。だって、私という「遠回りの見本」が目の前にいるのだから。私の失敗を踏み台にしてください。それが、講師としての私の存在価値です。
教室の外へ
ここまで、5つの言葉への返事を書いてきました。
改めて読み返すと、どれも「かつての自分自身に言いたかったこと」ばかりです。センスがないと思い込んでいた28歳の自分。間違いが怖くて語学学校で発言できなかった自分。英語なんて使わないと思っていた18歳の自分。もっと早く始めていればと悔やんだ自分。
生徒たちの言葉は、過去の自分が時空を超えて問いかけてくるようなものです。だから答えられる。同じ場所に立ったことがあるから、そこからの景色を知っている。
最後に一つだけ。
あなたがこのブログを読んでいるということは、英語に対して何かしらの関心を持っているということです。「やらなきゃ」でも「やりたい」でも「やってみようかな」でもいい。その気持ちがある時点で、あなたの英語は、もう動き出しています。
前回の記事で書いた通り、大事なのは「とりあえず、ログインすること」です。ログインさえすれば、クエストは始まります。
教室で待っています。
【次回予告】
次回は「英語が開いた人生の扉——そしてこれから」をお届けします。
映画館のアルバイトから英語講師へ。全40回にわたるこのブログの締めくくりとして、これまでの道のりを振り返りながら、次の10年への展望をお話しします。
【今回のポイント】
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「センスがない」は幻想。あるのは「まだ時間が足りていない」という事実だけ
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間違いは「失敗」ではなく「データ収集」。間違えた人の方が一歩先にいる
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英語の価値がわかるタイミングは人それぞれ。種はすぐには芽を出さない
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「たられば」に使う時間は、学習時間をゼロにする。過去より現在の1問を
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「先生みたいになれない」のではなく「先生と同じルートを通る必要がない」
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このブログを読んでいる時点で、あなたの英語はもう動き出している
【プロフィール】
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Yuki
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栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師
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保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)

