英語学習が続かない人必見|やる気に頼らず習慣化する5つの技術
継続の技術——モチベーションに頼らない習慣化
「先生、やる気が出ないんですけど、どうすればいいですか?」
アカデミック・ロードで、この質問を受けない月はありません。中学生から社会人まで、年齢も英語レベルも関係なく、みんな同じ壁にぶつかります。「やる気が出ない」と。
私の答えは、いつも同じです。
「やる気なんか、出なくていいよ」
生徒は大抵、怪訝な顔をします。英語の先生がやる気を否定していいのかと。でも、これは42年間の人生と、14年間の英語学習で辿り着いた、私なりの結論なのです。
モチベーションは、長距離を走るためのガソリンではなく、一瞬で燃え尽きるロケット燃料のようなものです。長期間の学習には向いていません。
では、何で走るのか。それは「習慣」という名のエンジンです。
モチベーションが続かない理由:私の「やる気サイクル」
過去の自分を振り返ると、モチベーションの浮き沈みには明確なパターンがありました。
TOEIC学習を始めた頃。新しい問題集を買った日は、「よし、今日から毎日3時間勉強するぞ!」と燃えていました。1日目は3時間やれる。2日目も2時間半。しかし、3日目は仕事が忙しくて1時間になり、4日目は疲れて30分。5日目は「明日まとめてやろう」と言い訳をし、6日目は「来週から本気出す」と先延ばしにする。
このサイクル、英語学習者なら覚えがあるのではないでしょうか。
オンラインゲームに12,000時間を費やした私ですが、ゲームでこんなサイクルに陥ったことは一度もありませんでした。なぜか。ゲームには「やらなきゃ」という義務感がなかったからです。やりたいからやる。ログインしたら自然とクエストが始まる。そこに「モチベーション」なんて大層なものは不要でした。
ここにヒントがありました。ゲームを続けられたのは、意志の力ではなく、「自然とやってしまう環境」が整っていたからなのだ、と。
「環境設計」という発想:意志力を使わない仕組み
以前の企業研修の記事で、「モチベーションに頼るな、仕組みを作れ」という話をしました。あの時は講師として受講者を観察した結論でしたが、実は自分自身がそれを最も必要としていた人間でした。
振り返ると、私が英語学習を長く続けられた時期には、必ず「環境設計」がありました。意志力に頼らず、自然と学習が始まる状態を作っていたのです。
一つ目は、図書館という「強制装置」です。
29歳無職の時、私は毎日朝8時から夜8時まで図書館に通い詰めました。あれは、やる気があったから続いたのではありません。「家にいると何もしない自分」が怖かったから、物理的に家から離れたのです。図書館に着いてしまえば、周りは勉強している人だらけ。スマホもまだ持っていなかった時代です。やることが「勉強しかない」環境に自分を放り込みました。
意志力など、ほぼ使っていません。「図書館に行く」という一つの判断を下すだけです。それ以降は、環境が勝手に自分を勉強へと向かわせてくれました。
二つ目は、通勤電車という「移動する教室」です。
英会話スクールに勤めていた時、片道45分の通勤時間をリスニングの時間にしていました。iPodに公式問題集の音声を入れて、電車に乗ったらイヤホンを装着する。これも意志力ではなく、「電車に乗る」→「イヤホンをつける」という動作の連鎖で自動化していました。
重要なのは、「勉強しよう」と決断する瞬間を極力ゼロに近づけることです。決断にはエネルギーが要ります。毎回「今日はやるかどうか」を考えていたら、遅かれ早かれ「やらない」が勝ちます。だから、考える前に体が動く状態を作るのです。
三つ目は、朝の1.5時間という「聖域」です。
TOEIC 880点を目指していた時、私は朝9時から10時半を学習時間に固定しました。夜型人間だった私にとって、朝型への切り替えは簡単ではありませんでした。でも一度リズムが定着すると、朝起きたらまず問題集を開くという動作が、歯磨きと同じレベルで自動化されました。
歯磨きをする時、「今日は歯を磨く気分かな」などと考えないはずです。英語学習も、そのレベルまで無意識の行動に落とし込めたら勝ちなのです。
「トリガー」と「ルーティン」:習慣化の公式
アカデミック・ロードで生徒に習慣化を教える時、私はこんな公式を使っています。
「すでにやっていること」+「新しい習慣」= 継続
具体的にはこうです。
「電車に乗ったら」+「英語の音声を聴く」
「お風呂から上がったら」+「単語帳を5分見る」
「寝る前に歯を磨いたら」+「英語の本を1ページ読む」
すでに習慣になっている行動を「トリガー(引き金)」にして、新しい行動をくっつける。これなら、「いつやるか」を毎回考える必要がなくなります。
ある高校生の生徒は、この方法を使って多読を習慣化しました。彼のトリガーは「夕食後に部屋に戻る」こと。部屋に戻ったら、机の上に英語の本が開いた状態で置いてある。椅子に座ったら、自然と目に入る。「読もうかな」ではなく、「目に入ったから読む」という仕組みです。
「小さすぎる目標」の威力
習慣化でもう一つ大切なのは、「目標を小さくする」ことです。
「1日30分勉強する」。これは一見簡単に聞こえますが、実はかなりハードルが高い目標です。30分という時間を確保すること自体が、忙しい社会人にとっては重荷になります。「今日は30分取れないから、明日にしよう」。この「先延ばし」が3日続くと、習慣は途切れます。
私が生徒に勧めているのは、「馬鹿馬鹿しいほど小さい目標」です。
「1日1単語だけ見る」
「英語の音声を1分だけ聴く」
「英語の本を1行だけ読む」
「1単語って、意味あるんですか?」と生徒に聞かれます。あります。なぜなら、目的は「英語力を上げること」ではなく、「毎日英語に触れる習慣を作ること」だからです。
1単語だけ見るつもりが、「あ、次の単語も気になるな」と5単語見てしまう。1分だけ聴くつもりが、続きが気になって5分聴いてしまう。これが「小さすぎる目標」の力です。
始めるハードルを下げれば、「やらない日」がなくなります。「やらない日」がなくなれば習慣は途切れず、習慣が途切れなければ、いつの間にか英語力は上がっているものです。
ゲームで言えば、「毎日ログインボーナスだけ受け取る」つもりが、気づいたらクエストを3つクリアしていた、という状態です。ログインさえすれば、後は自然に進む。大事なのは「ログインすること」なのです。
「継続を途切れさせない」コツ:ゼロの日を作らない
習慣化において最も危険なのは、「1日でも完全にやらない日」を作ることです。
私自身の経験では、英語学習を3日以上完全に休むと、再開するのに倍のエネルギーが必要でした。1日休むと「まあ、明日やろう」。2日休むと「今週末にまとめて」。3日休むと「先週の遅れを取り戻さないと…」と、精神的な負債がどんどん膨らんでいくのです。
だから、「ゼロの日を作らない」。これが鉄則です。
体調が悪い日は、1単語だけ見る。仕事で疲れた日は、リスニング音声を1分だけ流す。旅行中なら、移動中に英語のポッドキャストを聴く。
「今日は単語を1個見た。だから今日はゼロじゃない」。この小さな達成感が、習慣の糸を繋ぎ止めてくれます。
TOEIC 990点を取るまでの3年間、私は「英語にまったく触れなかった日」を数えるほどしか作りませんでした。毎日3時間勉強した日もあれば、5分しかやれなかった日もある。でも、ゼロの日はほぼなかった。この「ゼロを作らない」というルールだけが、意志の弱い私を支えてくれた唯一の仕組みでした。
アカデミック・ロードで見た「継続の達人」たち
講師として生徒を見ていると、「この子は伸びるな」と感じる瞬間があります。それは、高い目標を語った時ではなく、淡々と続けている姿を見た時です。
ある中学3年生の女の子は、毎週の授業の前に必ず10分早く来て、多読図書を読んでいました。「先生に言われたから」ではなく、「早く来ちゃったから、読む物がここにあるから」。彼女にとって、英語の本を読むことは「努力」ではなく、「待ち時間の過ごし方」になっていたのです。
1年後、彼女の英検の結果は、入塾時の予想を大きく上回るものでした。
別の生徒さんは、毎朝の通学の電車でBBCのポッドキャストを聴く習慣を1年間続けました。「最初は30%も分からなかった」のが、半年後には「大体の内容が掴める」ようになったそうです。特別な教材も、特別な時間も使っていません。ただ、「電車に乗ったらBBC」という一つのルールを守り続けただけです。
共通しているのは、誰も「頑張っている」という顔をしていないことです。頑張っている感覚がある時点で、それは意志力で動いている証拠。本当に習慣化された行動は、頑張る必要がないのです。
「やる気」は結果であって、原因ではない
最後に、これだけは伝えておきたいことがあります。
多くの人は、「やる気が出たら行動する」と考えています。でも、私の経験では逆です。「行動するから、やる気が出る」のです。
TOEIC 755点から990点まで、何度も「もう無理だ」と思いました。でも、とりあえず問題集を開いてみる。1問だけ解いてみる。すると、「あ、もう1問いけるかも」と手が動き始めます。
これは脳科学でも説明できるそうです。人間の脳は、行動を始めることで側坐核という部位が刺激され、ドーパミンが分泌される。つまり、「やる気」は行動の結果として生まれるものであり、行動の前提ではないのです。
だから、やる気が出るのを待ってはいけません。待っている間に、人生は進んでしまいます。
「とりあえず、本を開く」
「とりあえず、1問解く」
「とりあえず、イヤホンをつける」
この「とりあえず」が、私の英語学習を14年間支え続けてくれた最強の言葉です。
【次回予告】
次回は、「生徒たちへのメッセージ——42歳の講師が伝えたいこと」をお届けします。
完璧主義を捨てる勇気、間違いを恐れない心。アカデミック・ロードで生徒たちと向き合う中で、私が本当に伝えたいことをお話しします。
【今回のポイント】
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モチベーションはロケット燃料。一瞬で燃え尽きる。長距離を走るには「習慣」というエンジンが必要
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「環境設計」で意志力を使わない仕組みを作る——図書館、通勤電車、朝の聖域
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「すでにやっていること」+「新しい習慣」の公式で、トリガーを設定する
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目標は「馬鹿馬鹿しいほど小さく」——1単語、1分、1行で十分
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「ゼロの日を作らない」が、習慣の糸を繋ぎ止める鉄則
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やる気は結果であって原因ではない。「とりあえず、開く」が最強の習慣化テクニック
【プロフィール】
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亀井勇樹(42歳)
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栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師
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保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)

