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英語は何歳から始めても遅くない|28歳スタートでTOEIC満点を取れた理由

28歳からでも遅くない – 年齢を言い訳にしない学習法

「もう歳だから無理ですよね?」

アカデミック・ロードで英語を教えていると、社会人の生徒さんからこの言葉をよく聞きます。

「40歳から英語って、やっぱり遅いですよね…」

「若い頃にやっておけば良かったんですけど」

「記憶力が落ちてて、全然覚えられないんです」

その度に、私はこう答えます。

「私が三人称単数現在を理解したのは29歳ですが、何か?」

冗談のようですが、事実です。高校1年生で習うはずの基礎文法を、私は29歳にしてニュージーランドの語学学校でようやく理解しました。そんな人間が、42歳の今、TOEIC 990点満点を持って英語を教えています。

28歳で英語学習を始めた私の経験から、「年齢と英語学習」について、率直にお話しさせてください。

 

「臨界期仮説」という呪い

英語学習と年齢の話になると、必ず登場するのが「臨界期仮説」です。

ざっくり言うと、「言語習得には最適な時期があり、その時期(思春期前後)を過ぎると、ネイティブレベルの習得は極めて困難になる」という理論です。

この仮説を知った時、正直、絶望しました。「え、じゃあ28歳の俺はもう手遅れってこと?」

しかし、冷静に考えてみると、この仮説にはいくつかの重要な前提があります。

まず、「ネイティブレベル」を目指す場合の話だということ。発音やイントネーションを完全にネイティブと同じレベルにするのは、確かに大人になってからでは難しいかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。

あなたの目標は「ネイティブと間違われること」ですか?

TOEICで900点取ることですか? 英検1級に合格することですか? 仕事で英語のメールを書けるようになることですか? 海外旅行で困らない程度の英語力をつけることですか?

これらの目標に、臨界期は関係ありません。

私は28歳から始めて、42歳の今もまだネイティブの発音には程遠い。でも、TOEIC 990点は取れた。英検1級も受かった。通訳案内士にもなれた。生徒に英語を教える仕事で生計を立てている。

臨界期仮説は、大人の英語学習を否定するものではないのです。むしろ、「ネイティブ並みの発音」という幻想から解放してくれる理論だと、私は思っています。

 

「記憶力の低下」は本当か

「もう歳だから覚えられない」。これは、半分は本当で、半分は嘘です。

本当の部分から言うと、確かに短期記憶(ワーキングメモリ)は加齢とともに低下する傾向があります。新しい単語を10個見て、5分後にいくつ思い出せるか。このテストでは、20歳の若者に勝てない可能性が高いでしょう。

でも、「嘘」の部分があります。英語学習に必要な記憶は、短期記憶だけではないのです。

私が英検1級の語彙対策で2,400語を覚えた時のことを思い出してください。以前の記事でお話ししましたが、私は「覚える」のではなく「何度も出会う」という方法を取りました。1日50単語×300日。高速で周回して、同じ単語に繰り返し出会う。

これは「長期記憶への定着」であり、短期記憶の能力にはあまり依存しません。むしろ重要なのは、「繰り返しの回数」と「出会い方の工夫」です。

さらに言えば、語源学習。「pre-」が「前に」という意味だと知れば、preclude、precursor、predisposeが芋づる式に理解できる。これは「体系的な理解」であり、丸暗記とは別の記憶メカニズムです。

体系的な理解力は、むしろ大人の方が優れています。

 

大人の学習の「本当の強み」

ここからが本題です。年齢を重ねた学習者には、若い学習者にはない決定的な強みがあります。

まず一つ目は、「なぜ学ぶのか」が明確なことです。

ニュージーランドの語学学校で、私は20歳そこそこのクラスメートに囲まれていました。彼らは若くて、吸収も早い。でも、多くの学生が途中でモチベーションを失い、日本人同士で固まって遊んでいました。1年いてもレベル2から上がれない学生もいた。

一方、28歳の私には切迫感がありました。「帰国したら無職の29歳が待っている」。この恐怖が、毎朝5時に起きて『Grammar in Use』を開く原動力になりました。

企業研修でTOEICを教えていた時も、同じことを感じました。伸びた人の多くは30代後半から40代。昇進のため、海外赴任のため、転職のため。「英語ができないと、自分のキャリアが行き詰まる」という切実な理由を持っている人ほど、着実にスコアを伸ばしていました。若い人の「なんとなく英語ができたらいいな」よりも、大人の「この英語力がないと困る」の方が、はるかに強い推進力になるのです。

二つ目の強みは、「母語の知識が使える」こと。

28歳の私が英検1級の英作文を書けるようになったのは、日本語で論理的な文章を書く力があったからです。社会問題について意見を述べるエッセイは、まず「何を主張するか」を日本語で整理してから英語に落とし込む。この「思考力の転用」は、子どもにはできません。

通訳案内士の試験で日本史や地理を勉強した時もそうです。33歳で高校の参考書を買い直した私は、中学生の時よりもはるかに効率よく内容を理解できました。大人には「世界に対する知識の蓄積」があり、新しい情報を既存の知識ネットワークに接続しやすいのです。『水曜どうでしょう』で覚えた四国の地理が試験に出た時の快感は、学生時代にはあり得なかった「大人の学び」の醍醐味です。

三つ目は、「学習方法を自分で設計できる」こと。

子どもは学校のカリキュラムに従うしかありません。でも大人は、自分の弱点を分析し、最適な学習方法を選べます。

私の場合、サウスパークでリスニング力を鍛え、『Grammar in Use』で文法を固め、『金のフレーズ』でTOEIC語彙を増やし、韓国版公式問題集で実戦力を磨いた。この「自分だけのカリキュラム」を組めるのは、大人ならではの強みです。

 

「恥ずかしさ」という、大人だけの敵

強みがある一方で、大人の英語学習には若い人にはない敵がいます。「恥ずかしさ」です。

前の記事で触れましたが、私がニュージーランドで最初に読んだ英語の本は「絵本」でした。28歳の男が、絵本を一生懸命読んでいる。同じクラスの20歳の学生に見られたら、恥ずかしいことこの上ない。33歳で書店のレジに高校生向けの日本史の参考書を並べた時も、恥ずかしさはありました。

でも、この「恥ずかしさ」こそが、大人の英語学習の最大の敵なのです。

「こんな簡単な単語も知らないのか、と思われたくない」

「発音が下手だと笑われるかもしれない」

「自分の年齢で英語を習い始めるなんて、周りに知られたくない」

こうした心理的ハードルが、大人から「挑戦する勇気」を奪います。

企業研修で伸びなかった受講者の中にも、このタイプがいました。「わからない問題を質問するのが恥ずかしい」「同僚の前で間違えたくない」。プライドが、学びの邪魔をしていたのです。

一方、伸びた受講者はどうだったか。工場の休憩室で同僚とTOEICの問題を出し合い、間違えたら大笑いしていました。「恥ずかしさ」を「楽しさ」に変換できる人が、結局は伸びるのです。

 

42歳の講師が、28歳の自分に伝えたいこと

もし今、2011年に戻って28歳の自分に会えるなら、こう言います。

「お前の判断は正しい。28歳は遅くない。ただし、3つだけ覚えておけ」

一つ。他人と比べるな。語学学校で20歳のヨーロッパ人がペラペラ話しているのを見て落ち込むな。彼らは英語と同じ語族の言語を母語としている。スタート地点が違うのだから、比較に意味はない。比べるべきは、昨日の自分だけだ。

二つ。完璧を求めるな。ネイティブの発音にならなくてもいい。文法のミスがあってもいい。伝わればいい。28歳で絵本を読む恥ずかしさなど、3ヶ月後には忘れている。

三つ。年齢を武器にしろ。大学中退、映画館バイト7年、ゲーム12,000時間。この「遠回り」は全部、学習の糧になる。ゲームで培った粘り強さ、映画館で磨いたリスニング力、社会人経験で得た時間管理能力。若い頃の「無駄」に見えた時間が、全部つながる日が来る。

 

アカデミック・ロードで見る「大人の成長」

講師として7年、多くの社会人の生徒を見てきました。

40代で英検2級に合格した主婦の方。50代でTOEICスコアを200点伸ばした会社員の方。60代で洋書を楽しめるようになった方。

共通しているのは、全員が「年齢を言い訳にしなかった」ことです。

もちろん、若い生徒の方が覚えるのが早い場面はあります。中学生が1週間で覚える単語を、社会人は2週間かかるかもしれない。でも、社会人にはその単語を「使う場面」が想像できる。仕事のメールで使える、海外出張で役立つ、と思えるからこそ、記憶に定着しやすいのです。

「速く覚える」ことと「深く覚える」ことは、別のスキルです。大人は後者において、若者に負けていません。

 

今日が、残りの人生で一番若い日

このブログの第1回で、私はこう書きました。

「今日が、残りの人生で一番若い日です」

28歳で英語を始めた私は、42歳の今でもこの言葉を信じています。

あなたが30歳でも、40歳でも、50歳でも。英語学習に「遅すぎる」はありません。遅いのではなく、「大人なりのやり方がある」だけです。

記憶力が落ちたなら、繰り返しの回数を増やせばいい。恥ずかしいなら、恥ずかしさを笑い飛ばせる環境を作ればいい。時間がないなら、毎日10分だけでも続ければいい。

かつてオンラインゲームで12,000時間を費やした人間が言うのだから、間違いありません。レベル上げに年齢制限はないのです。

 

【次回予告】

次回は、「挫折を力に変える——大学中退からの再起」をお届けします。

大学中退、7年間のフリーター生活、TOEIC955点への後退。私の人生は挫折の連続でした。でも、その全てが「次へ進むための踏み台」だった。失敗との向き合い方について、改めてお話しします。

 

【今回のポイント】

  • 臨界期仮説は「ネイティブレベルの発音」に関する理論であり、資格取得や実用的な英語力の習得を否定するものではない

  • 記憶力の低下は「短期記憶」の話。「高速周回法」や「語源学習」など、繰り返しと体系的理解で補える

  • 大人の強みは「学ぶ理由の明確さ」「母語の知識の転用」「学習方法の自己設計力」の3つ

  • 最大の敵は「恥ずかしさ」。28歳で絵本を読む覚悟が、多読の第一歩になった

  • 「速く覚える」ことより「深く覚える」ことが、大人の学習では重要

  • 英語学習に「遅すぎる」はない。あるのは「大人なりのやり方」だけ

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)