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大学中退・英検1級4回不合格でもTOEIC満点を取れた理由|挫折を力に変える思考法

挫折を力に変える——大学中退からの再起

「お前の人生、失敗だらけだな」

先日、大学時代の数少ない知人と再会した時、冗談交じりにそう言われました。

「うん、知ってる」

笑いながら答えましたが、内心では「まあ、否定できないな」と思っていました。実際、私の人生を時系列で並べると、挫折のカタログのようになります。

大学中退。7年間のフリーター生活。29歳無職。TOEIC 755点の微妙さ。英検1級の一次試験4回不合格。TOEIC 955点への転落。突発性難聴。35歳での転職活動の壁。

書き出してみると、我ながら「よくここまで集めたな」と感心するほどです。オンラインゲームならさしずめ「挫折コレクション」という実績が解除されているでしょう。誰も欲しがらない実績ですが。

でも今、42歳になった私は、この挫折カタログの一つ一つが、今の自分を形作る不可欠なピースだったと確信しています。今回は、「失敗との付き合い方」について、改めてお話しさせてください。

挫折①:大学中退——人生最初の「ゲームオーバー」

私の挫折史の原点は、大学中退です。

理系の公立大学に進学したものの、オンラインゲーム『FINAL FANTASY XI』に12,000時間を溶かし、数学のテストで人生初の0点を取り、呼び出しを無視し続け、2回目の2年生すら乗り切れず退学しました。

このブログの第1回でもお話ししましたが、当時の自分には「恥ずかしさ」と「プライド」が邪魔をしていました。呼び出しに応じれば、まだやり直せたかもしれない。でも、「助けてください」と言えなかった。ダメな自分を直視することが、何より怖かったのです。

2005年の春、栃木の実家に戻った時の肩書きは「無職」。恥ずかしさと情けなさに毎日うなされました。

ここで学んだのは、「プライドは、時に最大の敵になる」ということです。

もし大学1年生の時に、「ゲームがやめられない、助けてほしい」と誰かに言えていたら。呼び出しに素直に応じていたら。結果は違っていたかもしれません。

でも、逆にこうも思います。あの挫折がなかったら、私は「普通の理系サラリーマン」になっていたでしょう。英語講師にはなっていなかった。宇都宮で生徒たちに「挫折しても大丈夫だよ」と胸を張って言える人間にもなっていなかったはずです。

挫折②:7年間のフリーター生活——「停滞」という名の沼

大学中退後、映画館の映写技師として7年間アルバイトを続けました。時給750円、手取り10万円そこそこの生活です。

この7年間を「修業の期間」とか「自分探しの旅」と美化する気はありません。正直に言えば、「居心地が良くて、動けなかった」だけです。

いつかは正社員の仕事を探さないと。そう思いながら、なんとなくの求職活動にトライしてはみるものの、本気で動くことはなかった。映画館の暗がりの中で、フィルムを回しながら、漠然と「このままでいいのかな」と思う日々。

フリーターや非正規社員を揶揄するニュースが流れるたびに、焦りと諦めが入り混じった感覚に襲われました。「自己責任」という言葉が、じわじわと心を締め付ける。でも、動けない。

ゲームで言えば、セーブポイントから先に進めなくなって、同じ場所でずっとウロウロしている状態です。経験値は入らないのに、時間だけが過ぎていく。

ここで学んだのは、「居心地の良さは、成長の敵になり得る」ということです。

ただし、この7年間が完全に無駄だったかというと、そうでもありません。映写技師の仕事で映画の英語を何百時間と聞き続けていたことが、後のリスニング力の下地になりました。そして何より、「このままではダメだ」という危機感を十分に熟成させる期間にもなっていたのです。震災という外的なきっかけがなければ、あの沼から抜け出せなかったかもしれませんが。

挫折③:29歳無職、TOEIC 755点——「思ったより伸びてない」

ニュージーランドから帰国した時、29歳。無職。職歴は映画館アルバイト7年のみ。履歴書に書ける資格は英検準2級だけ。

ワーホリでそれなりに英語力がついたと思っていたのに、初めてのTOEICは755点。800点は超えるだろうと思っていたので、正直ショックでした。

でも今振り返ると、この「微妙な数字」が私を救ったのかもしれません。

もし初回で900点を取っていたら、「もう十分だ」と満足して、それ以上の努力をしなかった可能性があります。755点という「悪くはないけど、全然足りない」スコアだったからこそ、図書館に12時間通い詰める原動力になったのです。

挫折が教えてくれたのは、「自分の実力を正確に知ること」の重要性です。755点は厳しい現実でしたが、同時に「何が足りないか」を明確に示してくれました。リスニング430点に対してリーディング325点という、100点以上の差。課題は読解力だと、数字がはっきり教えてくれたのです。

挫折④:英検1級、4回の一次試験不合格——「負けパターン」の学習

英検1級の一次試験には4回落ちました。以前の記事で詳しくお話ししましたが、この4回の不合格は、それぞれが異なる「次の一手」を教えてくれました。

1回目で語彙力の不足に気づき、2回目で読解力の課題が見え、3回目で英作文の「型」の重要性を知り、4回目で語源学習というアプローチに辿り着いた。

オンラインゲームのラスボス戦と同じです。1回目は相手の攻撃パターンすらわからない。2回目で「あ、ここで回復しないと死ぬな」と学ぶ。3回目で有効な武器が見えてくる。4回目で最適な装備と戦略が固まる。そして5回目に、ようやく倒せる。

失敗を「損失」と見るか「情報」と見るか。この視点の違いが、挫折の意味を根本から変えるのです。

挫折⑤:TOEIC 980点から955点への転落——「あと10点」の呪い

2017年5月にTOEIC 980点を取り、満点まであと10点。意気込んで臨んだ7月の試験で、955点に転落しました。25点ダウン。

この時は、冗談ではなく「もう辞めたい」と思いました。

でも、この955点があったからこそ、「990点を目指すのではなく、1200点を目指す感覚で臨む」という発想の転換が生まれました。天井ギリギリを狙うのではなく、天井の遥か上を見据えることで、心理的な余裕が生まれる。

2ヶ月後の9月、私はようやく990点を達成しました。もし7月に985点くらいで惜しい思いをしていたら、この「視座の切り替え」には至らなかったかもしれません。大きく転落したからこそ、アプローチそのものを見直す必要に迫られたのです。

挫折が教えてくれた「3つの法則」

42年間の挫折を振り返って、私はある法則に気づきました。

一つ目は、「挫折は、自分では見えない弱点を可視化してくれる」ということ。

TOEIC 755点はリーディング力の不足を、英検1級の不合格は語彙と教養の不足を、955点への転落はメンタル管理の甘さを、それぞれ教えてくれました。成功している時は見えない弱点が、失敗した瞬間にくっきりと浮かび上がるのです。

二つ目は、「挫折の痛みは、次の行動のエネルギーになる」ということ。

29歳無職の屈辱感がなければ、図書館に12時間通い詰めることはできなかった。4回の不合格の悔しさがなければ、語源学習にまで手を広げることはなかった。痛みを感じるということは、「まだ諦めていない」証拠でもあります。

三つ目は、「挫折のタイミングは、後から見ると絶妙である」ということ。

大学を中退していなければ英語の道には進んでいない。7年間のフリーター生活がなければ「這い上がる」ための危機感は生まれなかった。突発性難聴がなければ転職を考えなかった。点と点が線になるのは、いつも後からです。

生徒たちに伝えていること

アカデミック・ロードで生徒を教えていると、小さな挫折に出会う場面がたくさんあります。

英検に落ちた中学生。定期テストで思うような点数が取れなかった高校生。多読を始めたものの、絵本レベルの本すら読めなくて恥ずかしいと感じている生徒。

そんな時、私はいつもこう伝えています。

「先生は英検1級に4回落ちたよ。TOEICも、一回25点下がったことがある。でも、その失敗がなかったら、今の先生はいない」

大学中退の話も包み隠さず伝えるようにしていますが、「失敗は終わりじゃない、情報だ」というメッセージは、折に触れて伝えるようにしています。

挫折を経験したことのない講師より、挫折だらけの講師の方が、生徒の痛みに寄り添える。これは、私の挫折カタログが唯一誇れる「使い道」かもしれません。

【次回予告】

次回は、「継続の技術——モチベーションに頼らない習慣化」をお届けします。

挫折を乗り越えるにも、英語学習を続けるにも、最終的に問われるのは「継続できるかどうか」。でも、意志の力だけで継続するのは無理があります。モチベーションに頼らない「仕組み」の作り方について、具体的にお話しします。

【今回のポイント】

  • 挫折は「自分では見えない弱点」を可視化してくれる

  • 挫折の痛みは、次の行動のエネルギーになる——痛みを感じるのは「まだ諦めていない」証拠

  • 失敗を「損失」と見るか「情報」と見るかで、その後の成長が変わる

  • プライドが邪魔をして「助けて」と言えないことが、最大の失敗を招く

  • 居心地の良さは成長の敵——「停滞の沼」に気づくことが、抜け出す第一歩

  • 点と点が線になるのは、いつも後から。挫折のタイミングは振り返ると絶妙

  • 挫折だらけの講師だからこそ、生徒の痛みに寄り添える

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)