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TOEIC満点への道 Vol.9

英会話スクール就職への道 – 英検準1級が開いた人生の扉

 

はじめに

前回の記事でお話しした通り、ニュージーランドから帰国した私を待っていたのは、29歳無職という厳しい現実でした。TOEICは755点という微妙な結果。今回は、この状況からどのようにして「正社員」の切符を掴み、英会話スクール講師という新たな道に進んだのかをお話しします。


 

29歳無職、履歴書に書ける資格は「英検準2級」だけ

 

2012年10月、帰国後すぐにハローワークへ。求職者届を記入しながら、私は自分のキャリアの薄さを痛感しました。

  • 職歴欄: 映画館アルバイト(7年)

  • 最終学歴: 大学中退

  • 保有資格: 普通自動車免許、英検準2級

窓口の職員の表情が強張ったように見えたのは、気のせいではないでしょう。

「失業給付は3ヶ月後から、3ヶ月間支給されます」

つまり、半年後には完全に収入がゼロになる。このタイムリミットが、私を必死にさせました。


 

図書館が第二の家になった、毎日12時間の猛勉強

 

焦燥感から逃れるため、私は毎日朝8時から夜8時まで、近所の市立図書館に通い詰めました。

私の武器は、ニュージーランドで使い込んだ『English Grammar in Use』と、帰国後に購入した『Vocabulary in Use』シリーズ。特に『Grammar in Use』は、装丁が剥がれ落ちるほどボロボロ。それが「これだけやってきたんだ」という自信の証でした。

周囲にも、資格試験や公務員試験のために必死に机に向かう人たちがいました。私もまた、彼らに勇気をもらいながら、黙々と机に向かい続けました。


 

英検準1級への挑戦 – 履歴書に書ける武器が欲しかった

 

TOEIC 755点では履歴書にインパクトを与えられない。そう判断した私は、より実用性が評価される英検準1級に活路を見出しました。

なぜ準1級か?理由は単純です。「履歴書に堂々と書ける資格」が欲しかったから。準2級では「で?」で終わってしまう。準1級ならば、最低限「英語ができる人」として認識してもらえるはずだと考えたのです。

 

一次試験は「かろうじて」合格ラインを突破

 

正直、特別な対策はしていませんでした。6ヶ月の海外生活と、帰国後の図書館通いで培った英語力で勝負。結果は、かろうじて合格ラインを突破。冷や汗ものでしたが、とにかく二次試験に進めました。

 

二次試験で活きた「パブナイトの経験」

 

2月の二次試験(面接)。ここで、ニュージーランドの語学学校で毎週参加していたパブナイトの経験が活きました。あの騒音の中で鍛えた「間違えてもいいから話す」という度胸(物おじせず発言する力)が、面接官との会話を成立させてくれたのです。

趣味の話で「サウスパークが好きだ」と答えた時、面接官が笑顔になったのを覚えています。結果は、一次試験とは打って変わって、余裕を持っての合格でした。


 

ハローワークで見つけた「英会話スクール講師」という選択肢

 

2013年2月、ついに履歴書に書ける武器が揃いました。

  • TOEIC 755点

  • 英検準1級

この2つの武器を携え、再びハローワークへ。求人は、大半が英会話スクール講師のものでした。安定性に欠ける業界というイメージがありましたが、当時の私には他に選択肢はありませんでした。


 

運命の面接 – アニメ談義で掴んだ正社員への道

 

応募したのは、全国展開している英会話スクール。私の資格は辛うじて応募基準を満たしていました。

面接当日、まずは定型的な質疑応答で緊張の連続。しかし、ネイティブ講師との英語面接で運命の歯車が回り始めます。

趣味の話になった時、私は正直に答えました。

“I watch South Park and Family Guy almost every day.”

ネイティブ講師の目が輝きました。

“No way! Which episode is your favorite?”

そこから15分間、アニメ談義に花が咲きました。真面目な応募者が多い中で、「君みたいな人は珍しいね!」と、面接の雰囲気が一変しました。

 

大学中退の不安、そして正社員採用の通知

 

面接後も、「短大卒以上」という募集要項に満たない大学中退の学歴で落とされるのではないかと不安でした。

しかし1週間後、デモレッスンの案内が。そしてさらに1週間後、ついにあの電話が鳴りました。

「正社員として採用させていただきます」

電話を切った後、安堵と感動で涙が溢れました。29歳にして、初めての正社員。大学中退、フリーター生活から、人生を挽回する機会が巡ってきたのです。


 

新たな人生の始まり – 2013年4月

 

失業手当がギリギリ切れる4月から、勤務が始まることになりました。

初めてのスーツ、初めての正社員、初めての「先生」という立場。不安だらけでしたが、「やっと社会人になれた」という安堵感もありました。

振り返れば、あの図書館での12時間の努力、そして英検準1級という証明がなければ、この仕事には就けませんでした。あの時の努力は、決して無駄ではなかったのです。


 

【次回予告】

 

第10回「講師1年目の試練 – 教えることで学ぶ」では、英会話スクール講師として働き始めた私が直面した、予想外の困難についてお話しします。「英語ができる」と「英語を教えられる」の間には、想像以上に大きな壁があったのです。