TOEIC満点への道 Vol.7
【ホームステイ体験記】24時間英語漬け!「生きるための英語」が身についた6ヶ月
はじめに
前回の記事では、ニュージーランドでの語学学校生活と、そこで直面した「日本人グループの壁」についてお話ししました。今回は、生活の基盤となったホームステイ生活に焦点を当てます。
ニュージーランド到着初日の夜:「断れない」英語力
2012年5月12日、ニュージーランド到着の夜。60代のホストマザー、マーガレット(仮名)が差し出してくれた夕食は、骨だらけのチキンとジャガイモでした。
「Do you want some chicken?」
本当は「遠慮します」と言いたかったのですが、英語で丁寧に断る自信がない。結局、疲れ切った体に鞭を打ち完食しました。
この出来事が、私の6ヶ月間にわたる24時間英語漬けのホームステイ生活の幕開けでした。
初日の夜、眠れなかった理由
オークランド中心部から車で30分。マーガレットの家は、私が半年間過ごす「家」になりました。
彼女の英語はゆっくりで、なんとか理解できました。しかし、私の返事は**「OK」「Yes」「Thank you」の三つだけ**。それ以外の言葉が、驚くほど出てこないのです。
その夜、ベッドで私は一睡もできませんでした。時差ボケ以上に重くのしかかったのは、この現実でした。
「明日から、日本語が一切使えない生活が始まる」
朝食の困惑:”How do you like your eggs?”
翌朝7時。マーガレットはキッチンで朝食の準備をしていました。
「Good morning! How did you sleep?」
「…Not good」
そして、運命の一言が飛び出します。
「Now, how do you like your eggs?」
「卵が好きかどうか?」いや、違う。「どう調理してほしいか?」…しかし、「どうやって」とは、具体的に何を意味するのか?
固まる私を見て、マーガレットはすぐに察してくれました。
「Scrambled? Fried? Boiled?」
ああ、スクランブルエッグか、目玉焼きか、ゆで卵か!こんな簡単な日常会話すら、まともにできない。朝食を食べながら、私は自分の英語力の低さに深く絶望しました。
バスの中での気づき:リスニング力が自然に向上する環境
語学学校への移動はバスでした。マーガレットが教えてくれたのは「277番の終点まで乗ればいい」ということ。
バスの中で、私はあることに気づきます。乗客の会話が否応なしに耳に入ってくるのです。
最初はただの雑音でした。しかし、2週間後には単語が、1ヶ月後には話の内容がなんとなくわかるようになっていました。
「あ、今の人『週末にビーチに行く』って言った!」
こうした小さな「聞き取れた!」という成功体験の積み重ねが、私のリスニング力を着実に向上させていきました。
夕食時の会話 – 最高の無料英会話レッスン
毎晩6時の夕食は、私にとって最も緊張する時間でした。マーガレットが必ず「今日はどうだった?」と聞いてくるからです。
最初の1週間は、「Today…school…good」といった単語の羅列。でも、マーガレットは辛抱強く待ってくれました。急かすことなく、時には単語を提案してくれながら。
2ヶ月後には、私は授業の内容について説明できるようになっていました。
「Today, we learned about passive voice. It was difficult, but my teacher explained very clearly…」
「That’s wonderful! Your English is improving so much!」
この褒め言葉が、どれだけ私の自信を支えたことか計り知れません。
テレビという最強の英語学習ツール
私はある日、勇気を出してリビングに降り、マーガレットと一緒にテレビを見始めました。
ニュージーランドの国営放送のニュースは、話すスピードがゆっくりで、字幕(クローズドキャプション)も表示できたのです。
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映像で状況がわかる
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字幕で単語の綴りがわかる
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マーガレットが時々解説してくれる
この3つの組み合わせが、私の英語理解を飛躍的に向上させました。特に料理番組は、実生活で使える英語の宝庫でした。
ホームステイが私に教えてくれた3つの教訓
6ヶ月のホームステイ生活を通して、私は英語力だけでなく、もっと大切なことを学びました。
1. 「間違えても死なない」という安心感
マーガレットは私の間違った英語を一度も笑わず、代わりに正しい言い方を自然に示してくれました。
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私:「Yesterday, I go to city」
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彼女:「Oh, you went to the city yesterday? What did you do there?」
この安心感があったからこそ、失敗を恐れずに話す勇気が持てたのです。
2. 生活英語こそが、真の英語力
語学学校で習う文法も大切ですが、「電子レンジの使い方」「洗濯機の止め方」「体調不良で病院に行きたい」といった**「生活で本当に必要な英語」**は、ホームステイでしか学べませんでした。
3. 文化の違いを英語で説明する力
「Why do Japanese people say ‘Itadakimasu’?」「What’s ‘Golden Week’?」
マーガレットの素朴な質問に答えるため、必死で英語を組み立てました。日本文化を英語で説明する能力は、後に私の重要な基礎となりました。
6ヶ月後、感謝の言葉を伝えた別れの日
2012年11月、マーガレットとの別れの日。涙を浮かべる彼女を前に、私は6ヶ月前には決してできなかったことをしました。
「Margaret, thank so much for everything. You taught me not only English but also confidence. You’re my New Zealand mother forever.」
完璧な英語ではありません。でも、自分の感謝の気持ちを、自分の言葉で伝えることができた。これが、ホームステイが私にくれた最高の贈り物でした。
ホームステイを検討している方へ
もし迷っているなら、私は迷わず「絶対にすべき」と答えます。ただし、これだけは覚悟しておいてください。
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最初の1ヶ月は試練です(でも、それが普通です)。
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部屋に閉じこもらないこと(リビングにいる時間=英語力向上時間です)。
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ホストファミリーは最高の conversation partnerです。
語学学校では「勉強としての英語」を、ホームステイでは「生きるための英語」を学びます。この違いは、あなたの人生を大きく変えるでしょう。
次回は、「帰国後の現実 – TOEIC初受験で755点」をお届けします。29歳無職という厳しい現実の中、留学の成果を示すTOEICの数字が私に小さな希望を与えてくれました。