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TOEIC満点への道 Vol.5

 


English Grammar in Useとの出会い – 28歳で文法を克服した方法

「ユウキ、これ使ってみない?」

2012年6月、ニュージーランド・オークランドの語学学校。レベル4のクラスを担当していたスコットランド出身の女性教師が、青い表紙の分厚い本を私の前に置きました。

『English Grammar in Use』

その瞬間、私の英語学習が180度変わることになるとは、まだ知る由もありませんでした。

55ドルの投資が人生を変えた

「でも先生、これ全部英語じゃないですか…」

不安そうな私の顔を見て、彼女はにっこり笑いました。

「そこがポイントなのよ。日本語の文法用語に振り回されているあなたには、これが一番よ」

正直、半信半疑でした。日本語の文法書すら理解できない私が、英語で文法を学ぶなんて無謀すぎる。でも、人生最高の恩師と心から尊敬していた彼女の言葉を信じて、その日の放課後、オークランド大学の書店へ向かいました。

55ニュージーランドドル(当時のレートで約3,500円)。語学学校に通う無職の身には、正直「高すぎる」と感じる金額でした。しかし、今思えばこの55ドルは、私の人生で最も価値のある投資だったと断言できます。

「三人称単数現在」の謎が一瞬で解けた

部屋に戻って本を開いた瞬間、衝撃が走りました。

Unit 1のページには、こう書かれていました。

I work / he works / they work
I drive / she drives / it drives

We use -s for he/she/it:
He works (NOT he work)
She drives (NOT she drive)

シンプルな絵と例文。たったこれだけ。

「なんだ、he/she/itの時は動詞に-sをつけるだけの話か!」

29歳にして初めて、高校時代から謎だった「三人称単数現在」の正体が分かりました。日本の文法書にある「三人称単数現在形では、動詞の語尾に-sまたは-esを付加する」という説明より、100倍分かりやすかったのです。

現在完了形も「絵」で理解できた

特に感動したのは、現在完了形の説明でした。

Tom is looking for his key.
He can’t find it.
He has lost his key.
(= He lost it and he still doesn’t have it)

時制を「時間軸の絵」で表現し、「過去に起きたことが今も影響している」ということを視覚的に説明していたのです。「継続用法」「完了用法」「経験用法」といった難しい言葉は一切ありません。

ただ、シチュエーションと意味だけ。これなら理解できる!

オークランド図書館での「1日5単元チャレンジ」

本を購入した翌日から、私の新しいルーティンが始まりました。

朝5時起床→Grammar in Use 5単元(約1時間)

オークランド中央図書館の開館と同時に入り、窓際の席を確保。150単元ある本書を1ヶ月で1周するため、毎日5単元ずつ進めました。

重要だったのは「書き込まない」こと。55ドルの本に直接答えを書くのはもったいない。ノートに答えを書き、間違えた問題には正の字でカウント。3回、4回と繰り返し解きました。

なぜ英語で英語を学ぶと効果的なのか

3ヶ月間、この本と向き合って分かったことがあります。

1. 文法用語の呪縛から解放される

「仮定法過去完了」とか「時・条件を表す副詞節」とか、そんな呪文は必要ない。”If I had known…”というパターンと、それを使う状況だけ覚えればいい。

2. 英語の感覚が身につく

日本語を介さずに英語を理解することで、ネイティブの思考回路に近づける。「これは現在完了だから have + 過去分詞で…」と考えるのではなく、「今も続いているから have done」と自然に出てくるようになる。

3. 実用的な例文で覚えられる

“The shop has been open since 8 o’clock”のような、実生活で使える例文ばかり。文法のための文法ではなく、コミュニケーションのための文法が学べる。

語学学校の先生も驚いた変化

『English Grammar in Use』を始めて2ヶ月後、作文の授業で先生に言われました。

「ユウキ、あなたの文法、劇的に良くなったわね!何があったの?」

実は、毎朝の5単元に加えて、学校の宿題で書く英文すべてに、この本で学んだ文法を意識的に使うようにしていました。受動態を習ったら受動態を使い、関係代名詞を習ったら関係代名詞を使う。

使うことで、初めて文法は自分のものになる。これも、この本が教えてくれたことです。

今、英語を教える立場として思うこと

現在、私は栃木県宇都宮市の英語塾で小学生から高校生まで教えています。文法で躓いている生徒を見るたび、28歳の自分を思い出します。

「先生、仮定法がさっぱり分かりません」

そんな生徒には、まず日本語の説明を一旦忘れてもらい、『English Grammar in Use』のアプローチで説明します。絵を描いたり、シチュエーションを設定し、「こういう時に使う表現」として理解してもらう。

すると、不思議なことに「あ、分かった!」という瞬間が必ず訪れます。

『English Grammar in Use』を最大限に活用する学習法

最後に、私が実践して効果があった学習法をお伝えします。

  1. 必ず例文を音読する(1単元3回)
  2. 間違えた問題は1週間後に解き直す
  3. 学んだ文法を使って日記を書く(3行でOK)
  4. 分からない単元は飛ばして、後で戻る
  5. 完璧を求めない(70%理解できれば次へ)

28歳まで三人称単数現在すら理解できなかった私が、TOEIC990点、英検1級を取得できたのは、間違いなくこの一冊との出会いがあったからです。

文法アレルギーの方、ぜひ一度手に取ってみてください。きっと「文法って、こんなにシンプルだったのか」と驚くはずです。


次回予告

次回は「パブナイトの衝撃 – お酒が解放したスピーキング力」をお届けします。内向的でコミュ障だった私が、なぜ毎週水曜日のパブナイトに欠かさず参加するようになったのか。アルコールと英語学習の意外な関係についてお話しします。