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TOEIC満点への道 Vol.29

 


日本史・地理・一般常識 – 英語以外の壁

「英語免除」を手にした直後に気づいた現実

2014年5月。TOEICで925点を出し、通訳案内士の英語科目免除をギリギリで手に入れた私は、しばらくの間、達成感に浸っていました。

が、それは3時間くらいで終わりました。

残りの科目を確認すると、「日本歴史・日本地理・一般常識」の3科目があります。英語を免除してもらった分、こちらで稼がないといけません。まずはレベル感を調べることにしました。

調べてみると、こんな情報が出てきました。「センター試験で6割取れるレベルが必要」。

…センター試験?

高校で日本史をやっていない私にとって、「センター試験の6割」というのが果たして難しいのかどうか、ピンときません。とりあえず過去問を印刷してみました。

日本史の問題を開いた瞬間、思いました。「あ、これはそれなりにやらないといけないやつだ」と。

高校の参考書を大人買いする33歳

翌日、書店に向かいました。

購入したのは、高校生向けの日本史の教科書と参考書、地理の教科書と地図帳、資料集、そしてそれぞれの問題集です。レジに並びながら、「33歳がこれを買うのは若干恥ずかしいな」とも思いましたが、どうせ誰も見ていないので関係ありません。

意外だったのは、勉強自体は苦にならなかったことです。元々、中学のころは社会が一番好きな科目でした。歴史の授業で先生が脱線して話す「こぼれ話」が大好きで、教科書の欄外に書かれたコラムを授業そっちのけで読んでいた記憶があります。

なのに、いざ参考書を開くと、なかなか頭に入らない。

理由は明快でした。「時間がない」のです。

学生時代は8時間眠って、授業のあいだに予習復習して、部活のあとに宿題をやる、という構造がありました。勉強しかすることがない、という環境の恵まれ具合を、大人になってから痛感します。社会人になってしまうと、「勉強している暇があるなら仕事しろ」みたいな場面が普通に発生します。英会話スクールの講師として働きながら、さらに通訳案内士の受験勉強をするというのは、なかなかに過酷でした。

試験本番は2014年8月24日。7月頃から本格的に追い込みをかけましたが、正直なところ「完璧に仕上がった」という感覚は最後まで得られませんでした。

『水曜どうでしょう』、まさかの本領発揮

そんな追い込み時期に、思わぬ「助っ人」が現れました。

私はずっと『水曜どうでしょう』というテレビ番組が好きで、DVDを全巻揃えています。何回見たか覚えていないほど繰り返し視聴している、いわゆる「どうでしょう廃人」です。

このシリーズの中に、「試験に出るどうでしょう」という神回があります。

内容は単純です。大泉洋さんが突然、中高生向けの社会科クイズに答えさせられ、不正解だったら現地に行って実物を確認してこい、という無茶な企画。「シラス台地って何?」という問題に間違えたら、本当に鹿児島まで行かされる。そういう番組です。

第2回が地理(石川・富山)、第3回が日本史。この関連の箇所は、笑いながら見ているうちに自然と頭に入りました。「あ、これ番組で出てきたやつだ」という形で記憶が定着するので、参考書をただ読むよりも圧倒的に残りやすいのです。

さらにラッキーだったのは、罰ゲームとして「四国八十八ヶ所の寺巡り」が登場するシリーズです。徳島から高知、愛媛、香川と各県の地理が細かく出てくるので、四国の地名や地形をやたら詳細に覚えることができました。

そして本番の地理の問題で、最後の大問のテーマが「四国」だったのです。

「大泉校長…ありがとう…」と思いながら解答欄を埋めました。番組内で彼が「案ずるな受験生!!」と言い放つシーンがありますが、本当にその言葉通りになりました。意図したわけではない偶然の一致でしたが、趣味と試験勉強がここまで融合するとは思っていませんでした。

一般常識については、観光庁が発行している「観光白書」を読んだり、旅行・観光関連のニュースに普段から気を配るようにしていたので、そこまで苦労しませんでした。

真夏の船橋で、謎の怒号を浴びる

2014年8月24日。一次試験当日。

会場は日大の理工学部・船橋キャンパスでした。夏の晴れた日で、会場には大勢の受験者が集まっていました。席についてから、周りを見渡して気づいたことがあります。

「…60代くらいの方が多いな」

感覚的には、会場の半分以上が定年退職後とおぼしき年齢層でした。通訳ガイドというのは、定年後の生きがい的な位置づけで人気があるのかもしれません。英語力を持った人が退職後に目指す資格、という文脈は確かに分かります。なんとなく会場全体が、「人生の余裕」を感じさせる雰囲気でした。

が、そんな雰囲気は試験直前に崩壊しました。

試験官の段取りが、なぜかやたらと悪い。説明がちぐはぐで、配布物の手順がうまく機能していません。しびれを切らした受験者のひとりが、怒鳴り声を上げました。しかもそれが一人ではなく、複数の人から次々と怒号が飛んだのです。

「もたもたするな!」

「早くしろ!」

みなさんが人生の余裕を感じさせる年齢層だっただけに、このギャップが妙に印象的でした。試験会場でこういうシーンを目にしたのは、後にも先にもこの時だけです。

落ち着かないまま試験が始まりました。正直、頭が冴えない状態でした。やばい、と思いながらも、できる限り解答を埋めていきました。

帰宅後、予備校系の解答速報をパソコンで確認したところ、結果は「なんとも言えない」という感触でした。各科目6割以上が合格ラインですが、どれもギリギリかな、というラインをうろうろしている感じです。一科目でも落としたら不合格。祈るしかありませんでした。

一次試験、通過

しばらくして、結果が届きました。

合格でした。

詳細を確認すると、どの科目も何とか6割を超えていました。『水曜どうでしょう』とドキドキの合わせ技で、なんとか通過できた形です。

次は12月7日。口述試験の日程が決まりました。会場は日本女子大。朝10時からです。

一次試験とは打って変わって、二次の会場は受験者がかなり少なかった。そして当然ですが、みなさんスーツ姿できっちり決めています。元教員のような方、企業で英語を使うポジションにいたような方、そういう雰囲気の人が多い印象です。

「念のためスーツで来て良かった」と、心底思いました。

試験の形式はこうです。3つの日本関連トピックが書かれたカードを渡され、そのうち一つを選んでスピーチをする。確か選択肢は「古墳」「風鈴」「自然災害」でした。

私は迷わず「自然災害」を選びました。

古墳については語れるほどの知識がありません。風鈴も、英語でどう面白く説明するかが思い浮かばない。でも自然災害なら、語学学校の授業で日本の地震の話をしたことがあるし、ニュースでも頻繁に扱われるテーマです。英語でのストックがある分野を選ぶ、というのは英検1級の二次試験でも学んだ(※この時点では英検1級は未合格ですが、スピーキング試験の鉄則として)ことでした。

緊張しながらも、日本の地震や豪雨災害などについて英語でスピーチをし、何とか時間を使いきりました。その後、面接官からの質疑応答へ。

一発目の質問が飛んできた瞬間、「あ」と思いました。

「あなたの話を聞くと、日本への旅行は自然災害によるリスクが非常に高いように思えますが、どうお考えですか?」

…そうか。私は肝心なことを忘れていました。これは、通訳案内士の試験だということを。外国人観光客を日本に招くための資格なのに、「日本は地震が多い」「大雨で被害が出る」という話ばかりしていたら、観光の敵になってしまいます。

瞬時に意図を理解し、切り返しました。緊急速報システムがあること、建物が地震に強い耐震基準で作られていること、ハザードマップで危険エリアが事前に確認できること。日本には自然災害に対するしっかりとした備えがあるので、旅行者も安心して楽しめます、という趣旨の返答をしました。

面接官の表情が、ふっと明るくなりました。

「良い答えですね」というニュアンスが、表情から伝わってくる。その後の質疑応答も手応えよく終え、会場を後にしました。

【次回予告】

次回は、「通訳案内士合格(2015年2月)- 国家資格の重み」をお届けします。

口述試験から2ヶ月後、ついに結果通知が届きます。合格証を手にした後に向かった意外な場所とは?そして5,000円で手に入る「ラミネートされた国家資格証」の、なんとも言えない存在感についてお話しします。

【今回のポイント】

  • センター試験6割レベルが必要とわかり、高校の教科書・参考書・地図帳を揃えてゼロから学び直した

  • 働きながらの受験勉強は「時間との戦い」。学生時代の有り余る勉強時間が、大人になって初めてありがたみを実感する

  • 『水曜どうでしょう』DVD全巻が、まさかの通訳案内士対策に。趣味と試験が融合する瞬間がある

  • 本番の地理最終大問のテーマが「四国」——番組で覚えた知識が直撃した

  • 一次試験の会場は60代以上が多い。定年後の人気資格であると実感

  • 口述試験のトピック選びは「自分が英語で語れる内容」を優先

  • 自然災害スピーチへの「それでは旅行客を不安にさせるのでは?」という突っ込みに、観光ガイドとしての視点で切り返せたことが手応えにつながった

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)