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TOEIC満点への道 Vol.27

絶望的な手応えからの「奇跡の合格」、そして4回の不合格を「攻略情報」と捉えるゲーマーならではの視点が、非常にカタルシスを感じさせる素晴らしい結末ですね。

今回も、強調(太字)を使用せず、WordPress形式で編集します。特に、「自己評価の不確かさ」と「失敗から学ぶ姿勢」を際立たせ、読者に勇気を与える構成にします。


英検1級合格(2015年7月)- 手応えゼロから奇跡の合格へ

結果発表まで「もう一次試験からやり直しか」と思っていた

2015年7月5日、二次試験が終わった。

面接室を出た私は、廊下の壁にもたれかかりながら天井を見上げていました。試験官の険しい表情。2分間でスピーチを言い切れなかった悔しさ。質疑応答で自信を持って答えられた場面が、ほぼゼロだったという現実。

「…これは、落ちたな」

確信に近い予感でした。

帰りの電車の中で、私はぼんやりと窓の外を眺めながら「一次試験からやり直し」の計算をしていました。一次試験の合格は1年間有効。次の二次試験に落ちたら、またあの地獄の語彙問題から始めなければならない。

25問中3問しか分からなかった絶望。「でる順A」すら頭に入らなかった苦しい時期。『パス単』を閉じたい衝動を抑えて、毎日単語を眺め続けた日々。

「…また、全部やり直しか」

窓の外を流れる景色を眺めながら、気持ちはどんどん沈んでいきました。

「判定されるまでの2週間」という名の地獄

英検の二次試験結果は、試験日から約2週間後にウェブサイトで発表されます。

試験の翌日から、私は「合否予想」という名の無駄な時間を過ごすことになりました。スピーチで言い切れなかった部分は致命的だったのか。ネイティブの試験官の険しい表情は、何を意味していたのか。質疑応答で答えた内容は及第点だったのか。

考えても答えは出ません。でも、考えずにはいられない。

そして2週間、英検のサイトをブックマークしたまま、何度も開いては「まだ発表されていません」という画面を確認し続ける日々。これは、試験よりも精神的にきつかったかもしれません。オンラインゲームでラスボスを倒した後、エンディングが始まるまでの謎のロードタイムのような、どうしようもない待ち時間でした。

2015年7月22日。運命の朝。

結果発表当日。私は朝6時に目が覚めました。普段は目覚まし時計が鳴るまで起きないのに、このときばかりは自然に覚醒してしまいました。

パソコンを立ち上げ、英検の公式サイトへ。「合否結果閲覧」のボタンを押す。受験番号を入力する。

「…あ」

画面に表示されたのは、想像とは全く異なる言葉でした。

「英検1級二次試験 合格」

え?合格?私が?あの手応えゼロのスピーチで?

もう一度、画面を確認しました。受験番号が合っているか確認しました。間違いなく、私の番号です。そして、スコアを見て、さらに驚きました。

二次試験スコア:82%。合格基準は60%。つまり、ギリギリではなく、余裕をもった合格基準を満たしていたのです。

「…嘘だろ」

思わず声が出ました。手応えゼロだと思っていたスピーチが、なぜか基準をクリアしていた。試験官の険しい表情は、不満ではなく、単に「真剣に評価している顔」だったのかもしれません。

そういえば、かつてニュージーランドの語学学校で、先生に言われたことがありました。「ネイティブは話している間、笑わないよ。日本人は笑っていると丁寧だと思うけど、ネイティブはビジネスの場では真顔が基本」と。

あの険しい表情は、「ダメだこいつ」ではなく、「ちゃんと聞いているよ」という意思表示だったのです。完全に誤読していました。

なぜ「手応えゼロ」で合格できたのか

合格の通知を受けてから、しばらく冷静に振り返りました。手応えがなかったのに合格できた理由は何だったのか。

一番大きかったのは、「沈黙しなかった」ことだと思います。

以前お話しした通り、私は3週間の二次試験対策で、とにかく「止まらず話し続ける」ことを徹底的に練習しました。スピーチの内容が完璧でなくても、詰まりそうになったら手を動かして時間を稼ぐ。「Let me think about this from another perspective…」というフレーズで場をつなぐ。沈黙だけは絶対に避ける。

この練習の成果が、本番で発揮されたのだと思います。

英検1級の二次試験は、「流暢さ」と「論理的構成」と「内容の深さ」の3つが評価されます。私の内容の深さは、おそらく満点には程遠かった。でも、流暢さと構成はそれなりに評価してもらえたのかもしれません。

もう一つの理由は、英作文対策で積み重ねた「型」でした。「導入→本論(理由3つ)→結論」という骨格が体に染み込んでいたため、たとえ内容に迷っても、話の「形」だけは崩れなかった。内容が薄くても、構成がしっかりしていれば、それなりに聞かせることができる。これは、英作文対策の思わぬ副産物でした。

「4回の一次試験不合格」が教えてくれたこと

二次試験に一発合格した喜びに浸りながら、同時に一次試験で4回も跳ね返された日々を思い返していました。

正直に言うと、この「4回の不合格」という経験は、私の英語学習において非常に大きな意味を持っていました。もし最初の1回か2回の受験で合格していたら、あの苦しい勉強は続けていなかったかもしれません。

  • 1回目の不合格で、語彙力の壊滅的な不足に気づきました。25問中3問しか正解できない現実に向き合い、本気で単語帳に取り組む決意をしました。

  • 2回目の不合格で、読解力の課題が見えてきました。単語は覚えたけれど、長文の時間配分がまだ甘い。精読と速読のバランスを取り直す必要があると気づきました。

  • 3回目の不合格で、英作文の「型」の重要性を理解しました。この失敗がなければ、「日本語でも書けないことは英語でも書けない」という気づきには至らなかったはずです。

  • 4回目の不合格で、語彙の「底上げ」がまだ足りていないことを痛感し、語源学習という新しいアプローチを取り入れました。

つまり、4回の不合格それぞれが、「次の一手」を教えてくれていたのです。1回で合格していたら、この深みには到達できていなかったと思います。

オンラインゲームで言えば、ラスボスに何度も負け続けながら、その度に弱点を発見して装備を強化していくような感覚です。負けることで、次の攻略法が見えてくる。失敗を「損失」と見るか「情報」と見るかで、その後の成長が全く変わってくるのだと実感しました。

「合格」という2文字が持つ重み

英検1級合格証書が届いたのは、2015年7月10日のことでした。

白い封筒を開けると、証書には「2015年度第1回 実用英語技能検定においてその1級に合格したことを証明します」と書かれていました。

大学を中退した32歳の男が、「英語の最高峰の国内資格」を手にしている。この事実が、なかなか実感として入ってきませんでした。あのオンラインゲームに12,000時間を溶かした男が。映画館でアルバイトをしながら7年間惰性で生きていた男が。「三人称単数現在」の意味を29歳まで知らなかった男が。

証書を手に持ちながら、私はぼんやりと過去を思い返していました。ニュージーランドの語学学校で、プレースメントテストの結果を見てびっくりした日。パブナイトで、酔った勢いで初めてまともに英語で会話ができた夜。帰国後、TOEIC 755点を取って「思ったより伸びてる」と感じた瞬間。

あのころからは想像もできない場所まで来ていました。

英検1級は「通過点」だった

ただ、合格の喜びには少し複雑な色合いもありました。

英検1級に合格したからといって、英語が「完璧」になったわけでは全くありません。二次試験で80%のスコアを出せたとはいえ、まだまだ言いたいことを100%表現できる自信はない。語彙も、まだ知らない単語が山ほどある。ネイティブと深い議論を英語でやり合えるかと問われると、正直まだ怪しい。

英検1級は、ゴールではなく「通過点」だったのです。

それを実感させてくれたのは、合格の翌日でした。英会話スクールの仕事で、ある大学生の指導をしていた時のことです。彼は海外留学を目指していて、志望理由書を英語で書いてきていました。

「先生、これを添削してもらえますか?」

文章を読むと、確かに文法ミスもいくつかありましたが、それよりも「内容」が薄かった。留学したい理由が曖昧で、自分の言葉で語られていない。「英検1級に合格した英語講師」として、どうアドバイスすべきか。

私はしばらく考えた後、こう言いました。「英語の前に、まず日本語でもう一度書いてみて。なぜ留学したいのか、自分の言葉で書けるようになってから、英語にしよう」。

これは、英作文対策で自分が学んだことでした。日本語で書けないことは英語でも書けない。英検1級を通じて身につけた「思考の言語化」という力を、今度は生徒に伝えていく。それが、講師としての私の仕事だと感じた瞬間でした。

「英語資格二冠」から、次の山へ

2015年2月に通訳案内士、7月に英検1級。この年、私の手元に2つの大きな資格が揃いました。残るは、TOEIC満点です。

当時のTOEICスコアは925点前後。満点の990点まで、あと65点。「あと少し」のように見えて、この65点が途方もなく遠い。900点を超えた辺りから、スコアの伸びが急激に鈍化していたからです。

でも、4回の一次試験不合格と1回の二次試験で学んだことがありました。「諦めなければ、いつかは届く」という確信です。根拠のない楽観主義ではありません。不合格を重ねながらも、少しずつ弱点を潰していけば、必ず突破口は開ける。そう信じる根拠を、この英検1級の戦いで手に入れていたのです。

映画館で7年間アルバイトをしていた男が英検1級に合格できたなら、TOEIC満点だって取れるはずだ。そう思いながら、私は次のステージへと向かっていきました。

振り返って思うこと

あの二次試験の日、面接室を出た瞬間に「終わった」と思った自分に、今だったら何を言えるでしょうか。

たぶんこう言うと思います。「お前の感覚は当てにならないから、結果が出るまで諦めるな」と。

英語学習に限らず、人間の自己評価は驚くほど当てになりません。「完璧だった」と思った試験で落ち、「絶対に落ちた」と思った試験で受かる。これはTOEICの本番でも、英検でも、繰り返し経験してきたことです。

大切なのは、結果が出る前に諦めないこと。そして、結果が出た後に、その結果から学ぶこと。4回の不合格はすべて、次の一手を教えてくれる「情報」でした。

かつてオンラインゲームで何度もリセットを繰り返しながら、諦めずにラスボスと戦い続けた男が、英語という長いゲームでも同じことをしていたのかもしれません。

【次回予告】

次回は、「通訳案内士への挑戦 – なぜ今更?」をお届けします。

実は英検1級より先に合格していた通訳案内士。時系列を少し遡り、なぜ国家資格である通訳案内士を目指したのか、英語力だけでは受からない「日本文化知識」の壁、そして合格まで何が必要だったのかをお話しします。

【今回のポイント】

  • 「手応えゼロ」でも合格できる。自己評価は当てにならない

  • 二次試験の合格スコアは余裕の82%。一発合格

  • 「沈黙しなかった」ことが合格を引き寄せた最大の要因

  • 英作文で身につけた「型」は、スピーチでも機能した

  • 4回の一次試験不合格は「損失」ではなく「攻略情報」だった

  • 英検1級はゴールではなく「通過点」。合格翌日から次の山を見ていた

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)