TOEIC満点への道 Vol.19
TOEIC 980点(2017年5月)- 満点への最終調整
2017年5月某日、自宅のポストに届いたTOEICのスコアシート。封を開ける手が、いつもより震えていました。
Total: 980点(L: 495 / R: 485)
「980…!」
思わず声が出ました。リスニング満点、リーディング485点。自己ベスト更新です。あと10点。たった10点で満点。ついに、ここまで来た。
しかし、この「あと10点」が、私にとって最も過酷な戦いの始まりだったのです。
「一万問の法則」との出会い
980点を取る少し前、私はネットである情報を見つけました。
「TOEIC 990点には、大体一万問くらい解く必要がある」
一万問。途方もない数字です。「本当かよ…」と半信半疑でしたが、これまで解いた問題数を計算してみることにしました。
当時の私は公式問題集を9冊持っていたので、3,600問。その他の問題集(特急シリーズ、『出る1000問』など)を合わせても、せいぜい6,000問程度。
足りない。圧倒的に足りない。
一万問まで、あと4,000問。この「問題数の壁」を埋めるために、私は藁にもすがる思いで新たな教材を探し始めました。
韓国版問題集との運命的な出会い
Amazonで問題集を検索していた時、「おすすめ」に見慣れない本が表示されました。表紙にはハングル文字。しかし、「ETS」「TOEIC」のロゴがあります。
調べてみると驚くべき事実が判明しました。韓国では日本よりも多くの公式問題集が発売されており、しかも1冊の収録問題数が桁違いに多いのです。
特に衝撃を受けたのが『YBM RC1000』という問題集。名前の通り、リーディング問題だけで1,000問収録されており、電話帳のような分厚さでした。
「解説はハングルだけど…大丈夫か?」
一瞬躊躇しましたが、冷静に考えました。980点を取れるレベルなら、もはや解説を読む必要はほとんどありません。正解さえ分かれば、なぜその選択肢が正しいのかは自分で判断できます。
「解説など不要!正解だけ分かればいい!」
こうして私は、韓国版の公式問題集を買い漁り始めました。日本の公式問題集と比べて圧倒的に安く、問題数も多い。まさに「量」を求めていた私にとって、救世主のような存在でした。
パズルのピースが埋まっていく感覚
韓国版問題集を解き始めて、不思議な感覚が芽生えてきました。
「あ、このパターン、前にも見たな」
一万問に近づくにつれ、TOEICの問題パターンがほぼ全て網羅されていく感覚がありました。まるで、ジグソーパズルの最後のピースを埋めていくような。
Part 5で見たことのない単語が出ても、「この選択肢なら答えはこれだろう」と予測でき、Part 7の長文も「この手のメールはこういう展開になる」と先が読めるようになりました。
そして何より大きかったのは、リーディングで7分程度の余裕ができたことです。
7分の余裕がもたらした革命
以前の私は、Part 7の最後の問題を解き終わった瞬間に「終了」のアナウンスが流れる、という綱渡り状態でした。しかし、一万問を解く頃には、7分前後の見直し時間が確保できるようになっていました。
この7分が、解き方を根本から変えました。
「1〜2問は戸惑う問題があるはず」
この前提で試験に臨めるようになったのです。分からない問題に出会っても、「後で戻ってくればいい」と思えるから焦らない。焦らないから、他の問題に集中できる。集中できるから、正答率が上がる。
この心理的な余裕が、実力以上のパフォーマンスを引き出してくれました。また、「ここで全力を出し切らなくても、見直しの時間がある」という余裕が、2時間の試験を乗り切る持久力にもつながりました。
2017年7月の悪夢:955点への転落
980点を取った2ヶ月後、2017年7月。「今度こそ満点だ」と意気込んで試験に臨みました。
しかし、この「意気込み」こそが、最大の敵だったのです。
試験当日、体調があまり良くありませんでした。それでも「ここまで来たんだから」と強行出場。リスニングが始まった瞬間から、嫌な予感がしていました。
「あれ、今の問題、外したかも…」
普段なら気にせず次に進めるのに、この日は一度のミスが気になって仕方ない。集中力が途切れ、また次のミス。悪循環でした。
試験終了後の手応えはイマイチ。そして届いたスコアシート。
Total: 955点(L: 495 / R: 460)
25点ダウン。リーディングは460点まで落ち込んでいました。「冗談じゃない…」と、受験料やこれまでの労力を考えて、「もう辞めたい」とすら思いました。
でも、ここまで来て引き返せるわけがない。あと10点だったんです。悔しさと疲労感で、しばらく何も手につきませんでした。
ケアレスミスの正体を暴く
955点のスコアシートを何度も見直して分析した結果、原因はPart 5の語彙・語法問題にあることが明らかでした。
どんなに準備しても、「見たことのない単語」や「知らない語法」は数問出題されます。問題は、そこで焦ってしまい、他の問題にまで影響が出たことでした。
対策として、私は韓国版問題集に付属していた小冊子に注目しました。ここには高難度の語彙・語法問題がまとめられていました。これを繰り返し解くことで、「見たことのない問題」への耐性をつけました。
本番で知らない単語が出ても、「まあ、こういうこともある」と冷静に対処できるメンタルを鍛えたのです。
990点の先を見る:1200点を目指す感覚
980点と955点。この乱高下を通じて、私はある決定的な事実に気づきました。
満点を取るためには、「990点を目指してはいけない」ということです。
955点を取った時の私は、「990点」という天井を目標にしていました。天井ギリギリを狙うと、たった一つのミス、たった一問の迷いで、天井に頭をぶつけて墜落してしまいます。「1問も間違えられない」というプレッシャーが、視野を狭くしていたのです。
必要なのは、「1100点や1200点を目指す感覚」でした。
もしTOEICが1200点満点のテストで、そのうちの990点を取ればいいとしたらどうでしょうか?多少の難問や、知らない単語が数個あっても、「まあ、これは捨てても990点には届く」と余裕を持てます。
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「990点がゴール」だと、1問のミスが致命傷に感じる。
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「1200点がゴール」だと、990点は通過点に過ぎない。
韓国版問題集や高難度模試を使って、本番よりも遥かに難しい負荷を自分にかける。そうすることで、本番の試験が「簡単」に見え、精神的な余裕が生まれます。
「満点を取りたい」という欲を捨てるのではなく、「満点のさらにその先」を見据えること。この視点の切り替えこそが、955点の挫折から私を救い出してくれました。
【次回予告】
次回は、「TOEIC 990点達成(2017年9月)- 満点の意味」をお届けします。
955点の挫折から2ヶ月後、ついに私は満点を達成しました。試験終了後の不思議な手応え、「990」という数字を見た瞬間の感情、そして満点を取っても「知らない単語はある」という現実について、包み隠さずお話しします。
【今回のポイント】
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「一万問解く」という目標が、学習に明確な方向性を与えた
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韓国版問題集は問題数が多く、コスパ最強
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解説が読めなくても、このレベルなら正解だけ分かれば十分
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7分の余裕が「後回しにして戻る」戦略を可能にした
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955点への転落は「天井(990点)」を見ていたから
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満点を取るには「1100点、1200点を目指す感覚」が必要
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ゴールを高く設定することで、本番での心理的余裕が生まれる
【プロフィール】
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亀井勇樹(42歳)
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栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師
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保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)

