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TOEIC満点への道 Vol.16

 


使用教材徹底解説① – 公式問題集の200%活用法

「公式問題集は、1回解いて答え合わせをしたら終わり」

2014年、TOEIC対策を始めたばかりの頃、私はそう信じて疑いませんでした。「一度答えを知ってしまった問題を解いても意味がない」と考えていたのです。

しかし、企業研修の受講者から同じ質問を受けた時、私は過去の自分の失敗を思い出して苦笑しました。実は、この「1回で終わり」という考え方こそが、スコアアップを阻む最大の要因だったのです。

今回は、TOEIC対策の王道教材である公式問題集を「200%活用する方法」について、私が990点満点を取るまでに編み出したテクニックを包み隠さずお伝えします。

 

なぜ公式問題集が「最強」なのか

まず、公式問題集がなぜ最強の教材なのか、その理由を説明します。理由は単純明快です。本番と同じETS(Educational Testing Service)が制作しているからです。

問題の傾向、難易度、そして何よりリスニングのナレーターが本番と全く同じなのです。

TOEICのリスニングには、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの4カ国のナレーターが登場します。公式問題集の音声には、本番と同じナレーターが収録されています。

私の場合、オーストラリア英語が特に苦手でした。あの独特の訛りと速さに最初は全くついていけませんでしたが、公式問題集を繰り返し聞くうちに、「あ、このおばちゃんの声だ」と分かるようになり、自然と聞き取れるようになりました。

市販の模試では、この「本番と同じナレーター」という恩恵は受けられません。これだけでも、公式問題集を使う価値は十分にあります。

 

最初の大失敗:記録をつけずに解いていた

ここで、私の恥ずかしい失敗談をお話しします。

2014年初頭、私は公式問題集を買い込み、意気揚々と解き始めました。

  • 1回目:解いて、答え合わせして、次へ。

  • 2回目:見たことある問題だが、また間違えた。まあいいか、次へ。

  • 3回目:また同じ問題でミス。「なんでだろう?」と思いつつスルー。

お気づきでしょうか。私は何も記録を取っていなかったのです。

どの問題を、なぜ、何回間違えたのか。すべてが闇の中でした。穴の開いたバケツで水を汲んでいるようなもので、いくら解いても成長しません。

この失敗に気づいたのは、対策を始めて2ヶ月ほど経った頃でした。「なぜ点数が上がらないのか」と悩んでいた時、ふと思いついたのです。「そもそも、自分が何を間違えているのか、把握していないじゃないか」と。

ここから、私の「記録システム」による学習が始まりました。

 

3回解き直しメソッド:1週間で完結させる

まず、私が実践した「3回解き直しメソッド」について説明します。公式問題集1セット(200問)を、1週間以内に3回解くことが基本ルールです。

具体的なスケジュールは以下の通りです。

  • 1回目(月曜日)

    • 本番と同じ時間配分で通して解く(リスニング45分、リーディング75分)。

    • 終わったら採点し、間違えた問題に付箋を貼る。

  • 2回目(水曜日)

    • 付箋が貼ってある問題だけを解き直す。

    • 正解したら付箋を剥がす。間違えたらそのまま。

  • 3回目(金曜日)

    • まだ付箋が残っている問題を解き直す。

    • それでも間違えた問題は、解説を熟読し、間違いノートに記録する。

「2日おきに同じ問題を解いて、答えを覚えてしまわないか?」という疑問を持つかもしれません。私も最初はそう思いました。

しかし、やってみると分かりますが、意外と覚えていないものです。特にPart 7の長文問題の内容(例:「〇〇社の新製品発表会の案内メール」など)は、2日後には記憶から消えています。

そして、仮に覚えていたとしても問題ありません。「正解を覚えている」ということは、「正しい思考プロセスが定着している」という証明でもあるからです。

 

付箋システム:間違いを「見える化」する

次に、付箋の使い方について詳しく説明します。用意するのは普通の付箋だけです。

  • 貼るタイミング

    • 間違えたら即座に問題番号の横に貼ります。これで、パラパラとめくるだけで自分の弱点が一目で分かります。

  • 剥がすタイミング

    • 2回目、3回目で正解したら剥がします。

  • 剥がした付箋の行方

    • 剥がした付箋は、捨てずに問題集の裏表紙に貼っておきます。

なぜ裏表紙に貼るのか?

それは、「この問題集で合計何問間違えたか」を可視化するためです。最初は付箋の山を見て落ち込みますが、その山が徐々に減っていく(裏表紙に移動していく)のを見ると、「成長している」と実感でき、モチベーション維持に非常に効果的でした。

 

正の字カウント:しつこい弱点を特定する

付箋システムと併用していたのが、「正の字カウント」です。

解答欄(解説ページ)に、間違えるたびに正の字を書いていくだけのシンプルな方法です。

1回間違えたら「一」、5回目で「正」。これを続けていると、面白いことに気づきます。正の字が「正」になる問題は、だいたい同じパターンなのです。

私の場合、それは分詞の問題でした。「また分詞か…」と、自分の弱点を嫌というほど思い知らされました。この「見える化」こそが、弱点克服の第一歩でした。

 

間違いノート:同じことを3回書けば覚える

付箋と正の字で「どこを間違えたか」は分かりました。次は、「なぜ間違えたか」を記録し、同じミスを防ぎます。

間違いノートに書くのは以下の3点だけです。

  1. 問題番号と自分の解答

  2. 正解と、なぜそれが正解なのか

  3. 自分がなぜ間違えたのか(思考のズレ)

例:

Vol.5 Test1 Q.115

自分の解答:(A) preparing

正解:(B) prepared

理由:reportは「準備される」側なので受動。-edを選ぶ。

間違えた原因:主語との関係を考えずに、なんとなく選んでしまった。

最初は面倒に感じましたが、続けていくうちに「同じ間違いを3回ノートに書く頃には、だいたい覚えている」という法則に気づきました。

人間の脳は、繰り返しインプットされた情報を「重要」と認識し、長期記憶に移行させます。間違いノートは、この脳の仕組みを利用した学習法なのです。

 

公式問題集を200%活用するための追加Tips

ここまでの方法に加えて、私が実践していたテクニックをご紹介します。

 

Tip 1:リスニング音声は「ながら聴き」でも活用

通勤電車の中で、毎日公式問題集の音声を聞き流していました。100回くらい聞くと、苦手だったオーストラリア英語のナレーターにも親しみが湧き、自然と聞き取れるようになりました。

 

Tip 2:解説は「なぜ不正解か」も読む

正解の解説だけでなく、「なぜ(A)や(C)が不正解なのか」も読みます。これにより、TOEIC特有の「引っかけパターン」が見えてきます。

 

Tip 3:公式・非公式合わせて1万問を目指す

最終的に、私は日本版の公式問題集9冊に加え、日本未発売の韓国版公式問題集や、1冊に1,000問収録された問題集にも手を出しました。

  • 日本版公式9冊:約3,600問

  • 韓国版など:約3,000問

  • その他(特急シリーズや模試):約3,400問

合計で約1万問。これを解き終えた頃には、TOEICの問題に対する「嗅覚」が身につき、「この問題はこう来るな」という予測が自然とできるようになっていました。

 

振り返って思うこと

公式問題集は、TOEIC対策における「最強の武器」です。

しかし、ただ解くだけでは、その威力は半減してしまいます。付箋で可視化し、正の字で弱点を特定し、間違いノートで理由を記録する。そして、1週間で3回解き直す。

このサイクルを回すことで、公式問題集は「200%」の効果を発揮します。

最初に間違いの記録をつけていなかった私は、2ヶ月間を無駄にしました。しかし、その失敗があったからこそ、このシステムを編み出し、満点へと到達できたのだと思います。

 

【次回予告】

次回は、「使用教材徹底解説② – 単語帳は本当に必要か?」をお届けします。

「単語は文脈で覚えるべき」「いや、単語帳でまとめて覚えた方が効率的」。この永遠の論争に、私なりの答えをお伝えします。『金のフレーズ』をボロボロになるまで使い込んだ私が、単語学習の「本当のところ」をお話しします。

 

【今回のポイント】

  • 公式問題集は本番と同じナレーター・同じ傾向で「最強」

  • 最初の失敗は「記録をつけずに解いていた」こと

  • 1週間で3回解き直す「3回解き直しメソッド」

  • 付箋システムで間違いを「見える化」する

  • 正の字カウントで「しつこい弱点」を特定する

  • 間違いノートは「同じことを3回書けば覚える」

  • 最終的に9冊、約1万問を解いて990点達成

【プロフィール】

  • 亀井勇樹(42歳)

  • 栃木県宇都宮市「アカデミック・ロード」英語塾講師

  • 保有資格:TOEIC L&R 990点、英検1級、通訳案内士(英語)